「これって経費になりますか?」

1.必要経費って?

「これって経費になりますか?」

税理士をしていて、この質問を受けたことがない人はいないのでは?と思うくらい、よく聞かれる質問です。
例えば、「お菓子を買った」とき。これは経費になるのでしょうか?
それとも、経費にはならないのでしょうか?

答えは、条件によって「YES」にも「NO」にもなります。

同じお菓子を買った場合でも、何のために買ったのかによって、経費になることもあれば、ならないこともあるからです。

今回は、個人事業主の方にとって身近な「経費」について、なるべく分かりやすく解説していきたいと思います!

2.そもそも、なぜ経費を引くの?

個人事業主の所得税は、基本的には事業で得た「儲け」をもとに計算します。
例えば、年間の売上が1,000万円あったとしても、1,000万円すべてが儲けというわけではありません。
商品を仕入れたり、事務所を借りたり、広告を出したりと、売上を得るためにはいろいろなお金がかかりますよね。

そこで、

売上などの収入-必要経費=事業所得

という形で、その事業によって実際にどれくらい儲かったのかを計算します。
この事業所得をもとに、最終的な所得税が計算されます。

つまり、何が必要経費になるのかによって、所得金額や納める税金の金額も変わってくるということです。

そう考えると、「これって経費になりますか?」という質問が多いのも当然ですよね。

3.必要経費とは

「必要経費」という言葉だけを見ると、「自分にとって必要だったお金なら経費になる」と思ってしまいそうです。
でも、食事も洋服も旅行も、本人にとっては何かしら必要があってお金を使っています。

だって、お金って何か「必要」があるから使うんですもんね。

税金の計算でいう「必要経費」は、単に自分が必要だと思ったかどうかではありません。

大切なのは、

その支出が事業と関係しているか

ということです。

所得税法では、商品の仕入代金など、売上を得るために直接かかった費用だけでなく、事務所の家賃や広告費など、事業を行うためにかかった費用も必要経費になるとされています。

つまり、特定の売上に直接結び付いていなくても、事業を続けていくために必要な支出であれば、経費になる可能性があります。

ケース①「お菓子を買った」

冒頭のお菓子の例で考えてみましょう!

スーパーマーケットが販売するためにお菓子を仕入れた場合、その仕入代金は必要経費になります。
お客様に出すためのお茶菓子や、取引先への手土産として買ったお菓子も、事業のための支出であれば必要経費になる可能性があります。

一方で、スイーツ好きの方が、自分や家族で食べるために買ったお菓子は、生活のための支出なので必要経費にはなりません。

同じお店で同じお菓子を買ったとしても、

・誰が使うのか
・何のために買ったのか
・事業とどのような関係があるのか


によって、答えが変わるということです!

旅行代についても同じです。

仕事のための出張であれば必要経費になる可能性がありますが、家族旅行であれば必要経費にはなりません。

つまり、「お菓子は経費になる」「旅行は経費にならない」というように、品物や支出の名前だけで判断することはできません。

税法上は、何を買ったのかだけでなく、
誰が、何のために、どのような状況で支出したのか

という事実関係が大切になってきます。

いわゆる「事実認定」の問題ですね。

4.判断が難しいケース

もちろん、簡単には判断できない支出もあります。

私たち税理士でも、詳しい状況を聞いてみないと判断できないケースはたくさんあります。

例えば、取引先との飲食代です。

ケース②「取引先と飲みに行った」

取引先との飲み会に使ったお金は、必要経費になるのでしょうか?

飲みに行ったからといって、その場ですぐに売上が発生するわけではありません。
でも、商談や情報交換をしたり、取引先との関係を築いたりすることも、仕事を進めるうえでは大切ですよね。
そのため、業務上の目的で行われた飲食であれば、「接待交際費」などとして必要経費になる可能性があります。

ただし、「取引先と飲んだ」と言えば、何でも経費になるわけではありません。

例えば、以前から仲の良い取引先と毎週のように飲みに行っていて、実際にはほとんど仕事の話をしていないのであれば、私的な飲食と判断される可能性が高くなります。

反対に、相手が友人であっても、その友人が取引先でもあり、具体的な商談や共同事業の打合せをしていたのであれば、必要経費と説明できる余地があります。

相手が「取引先」なのか「友人」なのかという肩書だけで決まるわけではないということです。

例えば、

・誰と飲食したのか
・ 何のために会ったのか
・どの仕事に関係していたのか
・金額や頻度は不自然ではないか
・実際には私的な飲み会ではなかったか


といった事情から、総合的に判断することになります。

週1回ならダメ、年1回なら大丈夫、といった明確な線引きがあるわけでもありません。

このあたりが、「これって経費になりますか?」という質問に即答しにくい理由です。

その支出が必要経費になるかどうかは、実際の状況を詳しく聞いてみないと分からないことも多いのです。

5.仕事とプライベートの両方で使うもの

個人事業主の場合、仕事とプライベートの両方で使うものも多いと思います。

例えば、

・自宅兼事務所の家賃
・自宅の電気代
・車のガソリン代や維持費
・携帯電話料金
・インターネット料金


などです。

自宅の家賃を例にすると、仕事でも使っているからといって、家賃の全額を必要経費にできるわけではありません。

仕事で使っている部屋の広さや使い方などをもとに、事業で使っている部分を計算します。

車であれば、仕事で使った日数や走行距離、携帯電話であれば実際の使用状況などをもとに分けることになります。

これを一般に「家事按分」といいます。

よく、

「何割までなら経費にできますか?」

と聞かれますが、誰にでも当てはまる割合が決まっているわけではありません。

「とりあえず半分にしておけば大丈夫!」というものでもないのです。

大切なのは、自分の実際の使い方に合った、無理のない割合になっていることです。

なぜその割合にしたのかを、きちんと説明できるようにしておきましょう。

6.領収証にメモを残しておきましょう!

必要経費になるかどうかは、その支出が事業とどう関係しているかによって決まります。

ところが、領収証には通常、

・誰と食事をしたのか
・何の打合せだったのか
・誰に贈り物を渡したのか
・どの仕事のために移動したのか


までは書いてありません。

領収証を見れば、「いつ」「どこで」「いくら使ったか」は分かります。
でも、「何のために使ったか」までは分からないことが多いですよね。
そこで、領収証だけでは仕事との関係が分かりにくいものについては、簡単なメモを残しておくことをおすすめします!

例えば、飲食代であれば、

> 〇〇株式会社・山田様
> 新規店舗の見積りについて打合せ

贈答品であれば、

> 〇〇商店・開店祝い

交通費や出張費であれば、

> 〇〇市・△△現場の打合せ

といった程度で構いません。
領収証の余白に書いてもよいですし、会計ソフトの摘要欄に入力してもよいでしょう。
長い文章を書く必要はありません。

数年後に見返したときにも、「これは何のために使ったお金だったかな?」とならない程度に残しておけば十分です。

ただし、メモを書けば何でも経費になるわけではありません。
実際には友人との遊びだったものに「取引先との打合せ」と書いても、必要経費にはなりません。

メモは、実際にあった事業との関係を、後から説明するためのものです。
領収証と一緒に支出の目的を残しておけば、税務調査の際にも説明しやすくなります!

7.まとめ

「これって経費になりますか?」という質問に、品物の名前だけで答えることはできません。

同じお菓子代や飲食代でも、事業のために使ったものであれば必要経費になる可能性があります。

一方で、個人的な生活や趣味のために使ったものであれば、必要経費にはなりません。

判断するときのポイントは、次の三つです。

・その支出は事業と関係しているか
・何のために使ったのかを説明できるか
・仕事と私生活の両方に使う場合、仕事の部分を合理的に分けられるか

「経費にできるものを探す」というよりも、

事業のために使ったお金を、きちんと説明できるようにしておく

という考え方が大切です!

「これは経費になるのかな?」と迷うものがあれば、支出した目的や使い方を整理したうえで、判断に迷うものがありましたら、当事務所までお気軽にご相談ください!

8.主な根拠条文・通達など

所得税法第27条第2項
→事業所得の金額は、その年中の事業による総収入金額から必要経費を差し引いて計算することとされています。

所得税法第37条第1項
→必要経費には、主に次のような費用が含まれます。
 ・売上原価など、収入を得るために直接かかった費用
 ・販売費、一般管理費など、事業を行うためにかかった費用

所得税法第45条第1項第1号
→生活費などの家事上の経費や、家事に関連する一定の費用は、原則として必要経費に算入しないこととされています。

所得税法施行令第96条
→仕事と私生活の両方に関係する家事関連費について、事業に必要な部分を明らかに区分できる場合には、その部分を必要経費に算入できることとされています。

所得税基本通達45-1
→家事関連費のうち事業に必要な部分については、業務の内容、費用の内容、家族や使用人の状況、自宅兼事務所などの利用状況を踏まえて判断することとされています。

所得税基本通達45-2
→家事関連費について、事業に必要な部分を明らかに区分できる場合には、その区分された部分を必要経費に算入できることが示されています。

国税庁タックスアンサー No.2210「必要経費の知識」
→必要経費の基本的な考え方や、生活費、家事関連費の取扱いなどが説明されています。
※必要経費になるかどうかは、それぞれの事業内容や実際の使い方によって判断が異なります。

8月3日 16:08

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